大人の学び

情報学 上巻〜現代大人の必修科目

はじめに〜なぜ今、情報学が必要なのか?

目覚まし時計の代わりにスマホのアラーム。起きてすぐLINEの通知をチェック。朝食を食べながらニュースアプリをスクロール。電車の中ではSNSとYouTube。昼休みには同僚から聞いた話をネットで検索。

帰宅後はテレビのワイドショーを見ながら、手元のスマホでまた別の情報を仕入れる。これが現代の私たちの一日です。気がつけば、起きている時間の大半を「情報」と向き合って過ごしています。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。その膨大な情報の中で、本当に正しいものはどれくらいあるでしょうか?あなたの人生にとって本当に必要な情報は、どれくらいあるでしょうか?

30代、40代、50代の皆さんが学生だった頃、学校に「情報」という授業はありませんでした。パソコンすらなかった時代もあります。でも今、私たちは毎日、学校では教わったことのない「情報の判断」を迫られています。

しかも、その判断ミスが、お金を失ったり、人間関係を壊したり、健康を害したりする可能性もあるのです。そんな時代だからこそ、大人になった今、改めて「情報学」を学び直す必要があります。

これは単なる勉強ではありません。現代を生き抜くための、必須のサバイバルスキルなのです。

基礎編:3秒でできる情報の見極め術

第1章:怪しいニュースを見抜く「3つの質問」

「新型コロナはただの風邪」「ワクチンには危険な成分が入っている」「この健康食品で癌が治る」「株価が明日大暴落する」。コロナ禍以降、こうした怪しい情報が溢れかえりました。

そして、意外にも多くの人がこれらの情報を信じ、拡散してしまいました。中には、普段は常識的な判断をする人たちも含まれていました。なぜでしょうか?それは、情報の真偽を見極める技術を、私たちが学んでこなかったからです。

でも大丈夫です。実は、怪しい情報の大部分は、簡単な方法で見抜くことができます。次回、何かの情報に接したとき、心の中でこの3つの質問をしてみてください。

質問1:誰が言っているの?情報には必ず発信者がいます。その人は実名でしょうか?それとも匿名でしょうか?専門的な資格や経験を持っているでしょうか?もしくは、単なる個人の感想や推測でしょうか?例えば、医療情報なら医師免許を持つ医師が発信しているか、経済情報なら経済学者やファイナンシャルプランナーなど専門家が発信しているかを確認します。

質問2:証拠はあるの?主張には根拠が必要です。具体的なデータ、統計、研究結果、事例などが示されているでしょうか?「みんな言っている」「常識だ」「間違いない」といった曖昧な表現だけで済まされていないでしょうか?

質問3:他の情報源でも確認できる?重要な情報ほど、複数の信頼できるメディアで報道されるはずです。一つのサイトやSNSアカウントでしか見かけない情報は、疑ってかかる必要があります。

この3つの質問を習慣にするだけで、90%以上の偽情報や怪しい情報は見抜けるようになります。最初は面倒に感じるかもしれませんが、慣れれば本当に3秒でできるようになります。

第2章:SNSとの上手な付き合い方

「いいね」が100個ついた投稿と、10個しかついていない投稿。あなたはどちらを信用しますか?多くの人は、無意識のうちに「いいね」の数が多い方を信用してしまいます。でも、これは大きな罠です。

SNSのアルゴリズムは、「あなたが見たくなる情報」を優先的に表示するように設計されています。正確さや重要性ではなく、あなたの感情を刺激する情報、あなたが反応しやすい情報を選んで見せているのです。つまり、SNSで流れてくる情報は、既にあなたの好みに合わせて「フィルター」がかかった状態なのです。これを「フィルターバブル」と呼びます。

対策1:朝一番のSNSチェックをやめる朝は脳が最も柔軟で、情報を吸収しやすい時間帯です。その貴重な時間を、アルゴリズムが選んだ情報で埋めてしまうのはもったいないことです。代わりに、信頼できるニュースサイトや新聞で、きちんと編集された情報を読む習慣をつけましょう。

対策2:異なる意見のアカウントもフォローする意図的に自分と異なる意見のアカウントもフォローしてみてください。最初は不快に感じるかもしれませんが、多様な視点を知ることで、物事をより客観的に判断できるようになります。

対策3:シェア前の10秒ルール何かを「シェア」したり「リツイート」したりする前に、必ず10秒間立ち止まって考える習慣をつけてください。「この情報は本当に正しいのか?」「シェアすることで誰かを傷つけないか?」「本当に拡散する価値があるのか?」を自問してみましょう。

応用編:世界を読み解く大人の教養

第3章:なぜ世界情勢を知る必要があるのか

「海外のニュースなんて、私には関係ない」「政治や経済の話は難しくてよくわからない」「日本のことだけ知っていれば十分」。こんな風に思っていませんか?気持ちはよくわかります。毎日の仕事や家事、子育てで忙しい中、遠い国の出来事まで気にかけている余裕はないでしょう。

でも、実は海外の出来事は、あなたの日常生活に直接影響しています。それも、思っている以上に大きな影響を。例えば、中東で紛争が起これば石油価格が上昇し、ガソリン代や電気代が高くなります。アメリカの金利が上がれば、日本の住宅ローンの金利も影響を受ける可能性があります。中国で新しい感染症が発生すれば、日本にも感染が拡大し、再び外出自粛や経済活動の制限が起こるかもしれません。

また、世界情勢を理解していると、投資や転職、子どもの教育方針を考える際にも役立ちます。どの業界が成長しそうか、どんなスキルが将来重要になるか、どの国や地域が発展しそうかといった情報は、すべて世界情勢と密接に関わっています。

第4章:「なぜ?」を3回繰り返す習慣

ニュースを見るとき、多くの人は「何が起こったか」だけを知って満足してしまいます。でも、本当に大切なのは「なぜ起こったか」「これから何が起こりそうか」を理解することです。そのための簡単な方法が、「なぜ?」を3回繰り返すことです。

例えば、「円安が進んでいます」というニュースを見たとします。

1回目の「なぜ?」なぜ円安になったのか?調べてみると、日本とアメリカの金利差が原因だとわかります。

2回目の「なぜ?」なぜ金利差があるのか?日本は低金利政策を続けている一方、アメリカは金利を上げているからです。

3回目の「なぜ?」なぜそれぞれの国が異なる政策を取っているのか?それぞれの国の経済状況や政策目標が違うからです。

このように掘り下げていくと、単なる「円安」という現象が、実は日米の経済政策の違いに根ざした構造的な問題であることがわかります。そして、この構造が続く限り、円安傾向も続く可能性が高いということも予想できます。

まとめ:情報に踊らされない自分になろう

情報学の基礎は「疑う力」と「調べる力」です。学生時代のテストと違って、世の中には正解が一つしかない問題ばかりではありません。でも、明らかに間違った情報は避けることができますし、より良い判断をするための材料を集めることはできます。

大切なのは、情報を受け身で受け取るのではなく、主体的に選び、分析し、活用することです。スマホやSNSは便利なツールですが、使い方を間違えると、かえって判断力を鈍らせてしまいます。今日学んだ技術を使って、明日からは情報に振り回されるのではなく、情報を味方につけてください。それが現代を生きる大人の必須スキルです。

そして、これは始まりに過ぎません。下巻では、さらに深く「情報を武器にする方法」「世界の裏側を読む技術」「未来を予測する思考法」をお伝えします。情報学の真の面白さと威力は、これからです。

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