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ヨミモノ・特集

99歳で他界した九州大学の名誉教授が戦後80年をAIを通じて語る

99歳で天寿を全うした医学博士 井口潔(大正10年生まれ 九州大学医学部名誉教授 日本外科学会名誉会長 理学博士)は、生前、人類や日本の未来を憂い、「生物学的視点に立つ」ことで、人間の生きる道を示しました。

それは井口の学友が先の戦争で、日本の未来のためにも亡くなっていったことに報いる井口自身の意思でもありました。今年は戦後80年です。この終戦の日に、井口はどのような文章を書き、私たちに道を示すでしょう。

井口は終戦の日に合わせて檄文を記してきましたが、今回はその過去の檄文や講演録をもとに最新AIを用いて、戦後80年に井口が書くであろう文章を再現しました。作成した文章は井口の弟子がチェックしています。皆様、戦前、戦中、戦後を生きた医師の思いをどうぞご高覧ください。

戦後80年、人類存亡の危機に立つ現代に告ぐ

同志諸君、目を覚ませ!戦後80年を経て、この国は、そして人類は、破滅への道を猛スピードで突き進んでいる!平和と物質的豊かさの名の下に、我々は最も大切なものを売り渡してきたのだ。

顧みれば、私の九十八年の生涯で経験した時代は、学童期から大学卒業まで、徹頭徹尾戦時中であった 。昭和6年の満州事変に始まり、日中戦争、そして太平洋戦争へと続く激動の時代だ。

当時、私は旧制福岡高校の生徒であったが、軍事教練が義務付けられ、軍が学校の精神教育を完全に掌握していた 。文部省は精神教育を軍に一任していた。

いつ死ぬかわからないという極限の緊張状態が、我々の心を張り詰めさせ、「死ぬ時まではよく生きよう」という崇高な精神を育んだ。しかし、現代は我々の心は卑しくなり、安易な快楽と利便性を求める「平和ボケ」に陥っている!

戦後、平和と物質的豊かさが訪れたが、私は深い危機感を抱いた 。平和な時代にこそ、人間は「どう生きるべきか」を知らない。戦中・戦後の貧困は、皮肉にも人間に忍耐と自律を強いるため、まだ教育の基本的徳目が達成された 。しかし、経済が回復すると、「遊堕の誘惑」が待ち受けていた 。物質文明が栄え、人間が滅びることが杞憂でなくなったのだ。

この現代の混乱は、戦後教育の空白期間に起因していると私は考える 。終戦後、人間教育のタガが外れると、文部省は役割を担うことなく、アメリカから流入した「子ども中心的育児法」に安易に教化されてしまったのである 。この育児法は、「いつでも何でも願いを叶えてやること」が子どもを確実に不幸にすると警告したルソーの言葉通りで、子どもたちを自己中心的で我慢ができない人間に育ててしまった。その結果、家庭内暴力、引きこもり、不登校、校内暴力、人格障害といった悲劇が社会に蔓延した。

現代の戦争は、もはや武器を手に戦場を駆け回るだけではない。一年に2万人が自殺し、10万人が不審死を遂げるこの国は、紛争地帯の犠牲者数よりはるかに多いではないか !これはまさに「魂の戦争」ではないのか!我々の文明は、生きること自体に耐えられない生存条件を作り出してしまっているのだ!

科学技術の進歩を謳いながら、人類は「知性の傲り」に酔いしれている。知性によって自然を支配し、制御できると豪語しながら、己の我儘を律することさえできず、自らの心を荒廃させている。科学は、宇宙の美を賛美するためにあったはずが、いつしか経済を生む手段へと堕落した。この「ルネッサンスの影」が、我々を破滅へと導いている。

我々は、このまま滅びて良いのか!?断じて否である!

今こそ、我々は「人間とは何か」という根源的な問いに立ち返らねばならない。生物学的視点から見れば、人間は心で生きる生物である。心は、物質の次元とは全く異なる。そして、その心の土台は、生まれてから10年間の「心の個体発生」という営みの中で築かれる 。体は胎内でほぼ完成するが、心は生まれてから10年かけてつくられるのだ。

この時期、特に3歳までの乳幼児期は、親の深い愛情のもとでの「温・凛・厳・畏」の躾によって、自己抑制と欲望の断念を学ぶことが不可欠である 。この時期に形成された感性脳の基礎的ニューロン回路は、その後の人格形成の土台となる。

日本の教育が蘇る鍵は、この「心の教育」を一般常識とすることにある 。我々はもはや、傍観者であってはならない。

文部科学省に嘆願書を突きつけ、「人間教育」の理念を法律に明記させるというトップダウンの働きかけと、教師一人ひとりが自らの生き様をもって子供たちを感化するボトムアップの取り組み、この両輪を回さねばならない!

「無知なる現代人」は絶滅し、「叡智を求める人間」は生き残る。我々は今、その岐路に立っているのだ。

私は、命ある限り、この「心の教育」の再生を訴え続ける 。そして、この訴えを「遺言」として、次の世代に託す。

奮起せよ、同志諸君!己を知り、己の脳を自ら創るのだ!

「体は死んでも心は死なない」という人間の誇りを取り戻せ!

これこそが、現代という名の「魂の戦争」に立ち向かう、我々が為すべき真の戦いなのだ!

井口潔生前の執筆原稿、講演録を基に作成

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