スタンフォード大学キャロル・ドゥエック教授の研究成果
「成長マインドセット」を提唱したのは、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授です。彼女は長年の研究から、人間には二つのマインドセット(思考様式)があると発見しました。
二つのマインドセット
- 硬直マインドセット(Fixed Mindset):「自分の能力は生まれつき決まっていて、変わらない」と考える。失敗を恐れ、挑戦を避ける傾向がある
- 成長マインドセット(Growth Mindset):「人間の能力は、努力や経験によって伸ばすことができる」と考える。失敗を学びの機会と捉え、挑戦を楽しむ傾向がある
ドゥエック教授の研究では、成長マインドセットを持つ学生の方が、困難に直面した時の粘り強さや、最終的な学業成績が高いことが示されています。
「できない」を「まだできない」に変える思考法
成長マインドセットを身につけるための、最もシンプルで強力な方法。それは、何かに行き詰まった時に、心の中で「まだ(YET)」という一言を付け加えることです。
言葉の変換例
「この問題が、できない」
↓
「この問題が、”まだ”できない」
「英語が、話せない」
↓
「英語が、”まだ”話せない」
たった一言ですが、この言葉は「今はできなくても、未来にはできるようになる可能性がある」ということを脳に教えてくれます。「できない」という終着点から、「できるようになるまでの過程」へと、視点を大きく転換させてくれる魔法の言葉なのです。
挫折から立ち直る成長マインドセット実践
仕事での失敗や、目標達成の挫折は誰にでもあります。そんな時、マインドセットによってその後の行動が大きく変わります。
失敗への反応の違い
- 硬直マインドセットの反応:「やっぱり自分には向いていなかったんだ…」と能力のせいにし、諦めてしまう
- 成長マインドセットの反応:「今回のやり方のどこが悪かったんだろう?」「次はどうすれば上手くいくか?」と、原因を分析し、次の戦略を考える
失敗は、あなたの価値を決めるものではありません。それは、目標達成のために必要なデータを提供してくれる「貴重なフィードバック」なのです。この考え方ができれば、挫折はあなたをより強く、賢くしてくれます。
部下や同僚の学習意欲を高める声かけ術
このマインドセットは、自分だけでなく、周りの人の成長を促すためにも使えます。特に、リーダーや先輩という立場にいる方は、部下や後輩への声かけを少し変えるだけで、チーム全体の学習意欲を高めることができます。
効果的な声かけのポイント
- 結果よりプロセスを褒める:「契約おめでとう!君は天才だね!(能力を褒める)」ではなく、「契約おめでとう!あの粘り強い交渉が実を結んだね!(努力を褒める)」
- フィードバックを与える:ミスを指摘するだけでなく、「この経験を次にどう活かせるか、一緒に考えてみよう」と未来志向の対話を促す
あなたの言葉が、周りの人の「成長マインドセット」を育む土壌となります。自分と周りの可能性を信じ、共に学び続ける組織を作っていきましょう。